『 最近の記事 』
京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』。引き続き解体現場からお届けします。
前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2
今回のリノベーションにおいて、ある問題が見つかりました。
シロアリの被害が深刻です。
写真は、改修前の家を外から見たところです。
家の横が法面になっていて、周りよりも家の方が地盤が低くなっています。この地形のせいで雨水が家の床下に流れ込み、シロアリにとって格好の湿気がちな環境になったと思われます。
ご覧のように、柱の被害も甚大です。
広報担当者、他にもシロアリの被害を見ようと家の中を見て回っていると…
「足元に気をつけてくださいね!床がだいぶシロアリにやられてしまっているので」。
瓦礫を運ぶ職人から声がかかりました。
足元が危ないので板でカバーしているとのこと。
「僕らも、何回も足がハマったんですわ。めくりましょうか?」
お願いします、と開けてもらうと…
床下の木がボロボロになっていました。
シロアリの性質として、水のあるところを起点にして1mほどしか移動できません。
ここまで被害があるということは、湿気の影響をかなり受けていたと考えられます。
特にひどい被害が見られたのが、庭に面した柱です。
約90年前の建物なので、家の基礎らしいものがありません。柱が地面に接している分、被害がひどくなったのでしょう。
そこで施主様とお話をし、当初の計画にはありませんでしたが、床下全体に防湿シートを敷き込んだ上で、コンクリート土間を全面に打つことになりました。
これでシロアリが上がってくることはできなくなるので、床下に水が流れ込むことがあっても被害を最小限に食い止めることができます。
こちらが土間が打たれた床下です。
ボロボロになっていた柱はこのように新しくなりました。
基礎を作り土台を入れ、シロアリで破損した木部は切り外し、土台と強固に繋ぎました。
「シロアリ対策はとても重要です。ひどい時には通し柱が丸ごと被害を受けることがあります。家の耐久性にも関わってくるので、水捌けは非常に大事だなと感じる部分です」と弊社所長。
年月を経たお家をリノベーションすることが多い吟優舎。
シロアリ対策においても、将来を見据えたご提案と、しっかりした施工を追求しています。
blogged by 松山一磨 & 黒川京子
2023年10月21日 6:49 PM |
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弊社所長と広報担当者、真夏のある日、解体工事現場にやってきました。
今年はとにかく猛暑。少し動くだけでも汗がダラダラ流れるような中、職人たちが解体作業を頑張っています。
ほぼ柱と壁だけになった室内。家の構造がよくわかります。
両サイドには窓がなく、玄関付近に立つと奥の裏庭の景色が目に飛び込んできます。
前回お伝えしたように、もともとは町家の形をしていたこの家。室内には窓がないので、どうしても暗めになってしまうのが町家の特徴です。
そこで今回のリフォームポイントのひとつが「庭に面した窓を景観の中心に据えること」。
窓に面した柱を抜いて、できるだけ窓を広く開口し1枚もののペアガラスを採用します。建具は引き込み式にすることで、最大限に光を取り入れる計画です。
「よく旅館などでお部屋に入ると、部屋は陰影があるけれど庭が明るく見えて素晴らしいですよね。その感動をこちらで再現しようと思うんです」と弊社所長。
玄関を入った時にお庭がパッと目に飛び込んできて、この家の一番のビューポイントになるに違いありません。
そう話しているうちに、職人たちの手作業でバスタブが取り除かれていました。
「お風呂が寒いのは嫌」とおっしゃっていた施主様。新しいバスルームは、断熱材で全体が覆われたシスバスに200Vの浴室暖房器を設置したホーローのタカラスタンダード製。お手入れも楽々です。
また、横長窓が付く予定ですので、裏庭を見ながらのバスタイムがお楽しみいただけることでしょう。
ここでちょっとクイズです。
一体これは何でしょう?
答えは、超強力なエアコン!
工事現場はとても暑いので、頑張る職人たちのために、このように吟優舎のエアコンと冷蔵庫を現場に差し入れしています。
暑い中での作業、ご苦労様です。
blogged by 松山一磨 & 黒川京子
2023年10月6日 3:33 PM |
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今回からご紹介するのは、京都東山の住宅街に佇む一軒家。
施主様ご夫妻の奥様が、小さい頃に住まわれていたご実家です。奥様のご両親がお住まいだったこの家をリノベーションし、ご夫妻の終の住処にしたいというご要望を承りました。
「私の父が子どもの頃に建った家なんです。もう90年以上経っているのかな。せやから、どうなるのかなと不安もあるけど、きっと上手に直してくれはると思って」
穏やかに語る明るくおしゃれな奥様と、物静かで優しそうなご主人。ご夫妻のお好みをよくご存知の息子さんが、インターネットで弊社を見つけ、薦めてくださったといいます。
築90年以上にもなるこのお家は、いわゆる古民家といわれる物件。外から見ると波板にツタが這っていて、確かに年月を感じさせます。
しかし古い梁や建具を生かして再構成すれば、きっとべっぴんさんの素敵なお宅になる!と直感した弊社所長。施主様ご夫妻のお好みに合わせ、町家風デザインを生かしたリノベーションを施すことになりました。
実はこの家、何度かの改修を経て物置が増築されるなど外観が変化していますが、もともとは町家だったと思われます。
【京町家の定義とは?】
「通り庭」「火袋」「出格子」のいずれかがあることです。
「通り庭」とは、玄関から裏庭までまっすぐに通る土間のこと。昔は裏庭にいったん出てから、お風呂とお手洗いがありました。通り庭にはおくどさん(かまど)が置かれたため、炊事の火が燃え移らないよう天井が吹き抜けになっており、その空間を「火袋」と呼びました。
改修前のキッチンです。天井は吹き抜けではなく、閉じられてしまっています。
ちょっと裏庭へ出てみましょう。
2階の端につけられた、小さな窓。今は裏庭からしか確認できないこの窓は、火袋に取り付けられた高窓です。町家の火袋には、このように灯り取りのための窓が必ず付けられていました。これはまぎれもなく火袋があった証拠です。
そこで、キッチンの天井に吹き抜けを再現し、最大限に光を取り込むプランを立てました。明るいキッチンに生まれ変わるのが今から楽しみです。
また施主様がご高齢になった時のこともふまえて、今後も暮らしやすくする工夫を盛り込んだプランをご提案いたしました。
時を積み重ねた一軒家が、レトロモダンな京町家に生まれ変わる過程を少しずつご紹介していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
blogged by 黒川京子
2023年9月25日 6:20 PM |
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堺妙法寺様のお手洗いリノベーション、いよいよ完成編をお届けいたします。
これまで、本堂とはいくぶんイメージが異なっていたお手洗い。
現在まで茶道文化が息づく堺妙法寺様のイメージに合わせた、茶室や安土桃山時代の意匠をふんだんに取り入れたお手洗いへと生まれ変わりました。
お手洗い前の庫裡(くり)と本堂をつなぐ廊下も、無垢の木に張り替えられ、統一感のある空間になりました。
お手洗いの入り口です。ご住職ご夫妻の念願であった男女別のお手洗いになっています。
こちらは、女性用トイレの扉を開けたところ。木製の建具や木の組子の障子が、和の雰囲気をいっそう際立たせているように感じられます。
タイル貼りの洗面台に、手洗い鉢を設置しています。その周りの壁に貼られているタイルは「麻の葉」柄。平安時代から仏像の装飾などに使われてきた六角形の幾何柄紋様で、着物や手拭いの柄としてもおなじみです。
タイルの淡い緑色と壁の色が補色効果となり、和調の色彩がよく映えています。
トイレ個室はシンプルながらすっきりとした空間になっています。
こちらは男性用トイレです。
工事の途中で、男性用小便器と、手洗いの上の空間がつながっていることに抵抗を感じ、ひとつのご提案をいたしました。
目隠しのために、竹を使ったパーテーションを設えるというものです。専門の竹材屋さんにてデザイン性の高い「晒(さら)し竹」を選び、この部分に合うように造作しました。目隠しの機能とともに、オブジェのような美しさも楽しめます。
このようにプラン段階にはなくても、現場の状況を見ながら新しいご提案をさせていただくことがあります。弊社では、より美しくご満足いただける施工を心がけています。
堺妙法寺には千利休の初めての茶の師匠にあたる北向道陳(きたむき どうちん)の墓碑があるほか、ご住職ご夫妻は茶道教室を開かれるなど、茶道文化が息づく場所です。
そのイメージに合わせ、男性用個室の引き戸の開口を曲線にする工夫をいたしました。
半円を描く形は、茶室の出入り口の形式のひとつ「火灯口(かとうぐち)」をモチーフにしたものです。枠などを使わず、アーチ状に丸く化粧しています。
こちらに開戸ではなく引き戸をつけることで、よりいっそう茶室のイメージに近づけることができたのではないでしょうか。
「本堂のお掃除や生花のお手入れに使う大きなシンクが欲しい」という施主様のご希望通り、このような広々とした大きなシンクを設置いたしました。寺院内を飾る美しい生花のため、こちらのシンクをご利用くださることでしょう。
暑い夏の工事。
施主様は、お忙しいお勤めの中にも関わらず、毎日毎日、働く職人たちのために冷たい飲み物や冷菓子をご準備してお待ちくださいました。その細やかな御心遣いに感謝して止みません。
心から深くお礼を申し上げます。誠に有り難うございました。
blogged by 黒川京子
2022年9月10日 4:25 PM |
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堺妙法寺様のお手洗いリノベーション、木工事の続報です。
今回のリノベーションのポイントのひとつが「木製建具」です。
妙法寺は茶の湯にゆかりのあるお寺ということで、茶室や安土桃山時代を思わせるイメージに合わせ、伝統的な建具のスタイルを取り入れました。
窓の障子は、木の組子で「井桁」風のモチーフを表現しました。井桁は「井戸のフチの井の字型の木組み」を図案化した紋様です。井戸は昔の生活には欠かせないものであり、その井戸を守る井桁には「家内安全」「くらしを守る」意味が込められています。
建具類は、取り付ける場所や雰囲気に合わせてひとつひとつ設計し、熟練の職人が丁寧に制作します。
先のブログでもお伝えしましたが、天井はかなり複雑な構造になっています。
というのも、一般的に天井は一番低いところに合わせてフラットに作られるのですが、こちらの場合は少しでも広く感じる空間に仕上げるため、場所によって高さや形状が異なる天井にしているのです。
さらに場所ごとに素材を変更しています。高さを均一にした天井造作に比べ、数倍の手間と労力が必要ですが、素材にこだわることでデザインとしても変化のある個性的な仕上がりになりました。
こちらの天井には、檜(ひのき)の薄板を斜めに編んだ、手間のかかる「網代(あじろ)」の仕上げに。茶室や天井などによく使われる仕上げで、和の趣を醸し出します。邪気をはらう魔除けの意味もあると言われています。
「簾天井(すだれてんじょう)」です。こちらも茶室によく使われる仕上げで、葭(あし)や淡竹(はちく)といった素材を簾編みにしたものを張っています。
このように様々な工夫をすることで、変化に富んだ空間を作り上げていきます。
完成まであと一歩です。次回はいよいよ完成をご案内します。
blogged by黒川京子
2022年8月30日 5:55 PM |
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