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伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.7

「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」は、伏見全町の総氏神であり、環境省「名水百選」に選ばれた「御香水(ごこうすい)」が湧くことでも有名です。 こちらにほど近い古民家リノベーション、完成編①をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5vol.6

改装前

施主様の家は、築100年ほどになる連棟の京町家。
30年ほど前に改装され、町家らしい面影はなくなっていました。


羽柴、福島、小早川など大名ゆかりの地名が残るこの地域には、かつて坪庭付きの立派な町家が多く残っていたとか。

年月を経るうちに周りの家は次々と現代風の家に変化。そんな中でも施主様は「自分の住まいを直すなら、町家風に」と考えていたそうです。

ご依頼を受けた吟優舎がご提案したのは「蔵戸をイメージした町家リノベーション」。

玄関扉にアンティークの蔵戸を使用し、ファサード(正面外観)には町家らしい格子を設るプランです。

ご提案したプラン図

ご契約後、実際に使用するアンティーク蔵戸を施主様にご確認いただきました。

使い込まれた味わいが感じられる、かなり広めの蔵戸です。

金具部分などディティールにも趣がある蔵戸。全体の傷みを補修し、磨き上げてから設置します。

蔵戸というと重く古めかしいイメージがあるのではないでしょうか。

吊り引き戸にすることで、動きは大変なめらかで軽やか、スムーズです。

戸を開ければ、墨モルタルにモザイクタイルを埋め込んだ土間が現れます。

アンティークペンダントライトの光が優しく照らす、大正モダンが薫るエントランスです。

改修前とは大きく変化したファサード。威風堂々とした蔵戸です。



「ご近所の方が前を通るたび『すごい!何が起こったの!?』と覗いて行かれるんですよ」と笑顔の施主様。

カメラマンによる撮影時にも、ご近所の方の「すごいわねー!」という驚きの声が。

思いがけず、嬉しい評判を耳にすることができました。

blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.4

織物の町として知られる西陣。
この地に佇む、築100年を超える京町家のリノベーションが進んでいます。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3

「観光・食事・鑑賞」が楽しめるプライベート空間『あそんでいきなはれKYOTO』としてリニューアルするための壮大な計画です。

施主様は「計画のイメージをぼんやりと思い浮かべたのは20年ほど前。しっかりと考え始めたのは10年ほど前です」と仰います。

「私は生まれも育ちも西陣です。どんどん京都らしい街並みがなくなっていくのを見て、本当に残念やなぁと。京都にしかない街並みや文化をずっと残したいな、もっと日本や海外の方に知ってもらいたいなっていうのが、もともとの始まりなんです」

そう仰る施主様が目指したのは、町家という空間で様々な体験ができる場所。


出張シェフが腕をふるう料理を味わったり、女将と一緒におしゃべりや料理を楽しんだり、舞妓さんとお座敷遊びをしたり。


一般の人には敷居が高く感じられるような体験を、ひとつの場所で楽しむことができます。

「商業施設のような町家ではなく、実際に住んでいる町家に来てもらおうというのが大きなポイントです。気持ちは『お家に遊びにおいでよ』なんですよ。それで名前も『あそんでいきなはれKYOTO』としました」

女将である施主様がイメージしたのは、おもてなしの場を新しいダイニングキッチンとお座敷に据えること。これが吟優舎のプランニングの要となりました。

工事前の通り庭(台所)

玄関と通り庭横の部屋をダイニングキッチンとして再構成。

壁にタイルを貼ってシステムキッチンを施工し、部屋の中心には立派なアイランドキッチンも入りました。

改修前のお座敷

舞妓さんとのお座敷遊びができるお座敷は、建具を新設したり窓まわりを磨き上げたり、美しく整えます。

「何でも新しい物は刺激的なのですが、やはり古い物は永年に使いましたら愛着がありますので大切にしてゆきたいと切に思いますね。ましてや永年住むお家となると尚更です。町家のリノベーションは本当に難しいと思います。一つ間違えると前のままの方が良かったなとなるのではないでしょうか。その思いを更に上回るには、納得がいく施工つまり、職人さんの匠の技かなと感じております」

施主様の思いとお言葉を大切に、工事を進めていきます。

blogged by 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.6

「伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』」の続報です。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5

木工事が順調に進み、完成に近づいたある日。
施主様に、縁側と玄関土間に設置するライトをお選びいただくことになりました。

部屋の雰囲気作りに欠かせない「照明」
どのような照明デザインを選ぶかによって、部屋の雰囲気はガラリと変わります。

まずは吟優舎が保有しているアンティークペンダントライトの中から、施主様宅に合いそうなものをいくつか選定。 その後、ラインにてご提案しました。(写真は候補の一例です)

今回はお写真でお伝えしましたが、直接現場にお持ちし、施主様とともに選ぶ場合もあります。

縁側には、こちらのアンティークライトを選ばれました。

実際に設置した様子です。

かさの部分が花のようにふわりと広がるペンダントライト。
レトロな華やかさがあり、やわらかな光が廊下と庭を優しく照らします。

玄関の土間上には、丸みのあるアンティークライトを選ばれました。

設置した様子です。

ころんとしたフォルムから漏れる光が、タイルを埋め込んだ飾り土間とマッチ。レトロな趣を引き出しているのではないでしょうか。

昭和初期ごろのアンティーク照明は、古民家や京町家と好相性なことから、よくご提案させていただく照明のひとつです。

数回に分けてお伝えしてきた伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』、近々完成の様子をお伝えいたします。

blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.3

上京区西陣。
築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。


(前回のお話はこちらvol.1vol.2)



平成14年に「歴史的意匠建造物」、そして令和6年には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、由緒ある京町家です。

新しいおもてなし空間『あそんでいきなはれKYOTO』へと生まれ変わらせるため、着々と木工事が進んでいます。

床下部分の施工です。
この現場は、床下状況が良かったので、土(地面)にそのまま施工をしています。

築年数を経た京町家は、床下が湿気がちになり、シロアリの被害を受けていることが多々あります。その状況は現場によって異なりますので、その都度判断し、適切な処置を加えています。

前回vol.1でお伝えした束石の上に「鋼製束/こうせいづか(大引を受ける床束の一種)」を設置しているところです。

この上に、床組の重要な構造である「大引(おおびき)」を施工していきます。

断熱施工です。
床下には、冬の寒さだけでなく、夏の暑さにも有効な断熱性能素材を敷き込みました。

京町家は、冬の寒さが気になるところ。
吟優舎のリノベーションでは、必ず断熱施行を行なっています。

シルバーのものは掘りごたつの専用断熱材です。

以上、現場からの施工報告でした。

blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.2

上京区西陣、築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。 (前回のお話はこちらvol.1)

「本当の京都を、日本だけでなく海外の方にも知ってもらいたい。実際に生活している京町家の空間を楽しんでもらいたいんです」。

そう仰る施主様。

長年の思いを観光・食事・鑑賞が楽しめるプライベート空間『あそんでいきなはれKYOTO』として形にするため、解体工事が始まりました。

床が取り払われ、中が見渡せる状態になりました。

立派な京町家ですのでとても奥に長く、京町家ならではの「鰻の寝床」の形状がよく分かります。

建物の両サイドに窓がないのは、京町家の特徴のひとつです。

床下の束石(つかいし)を設置しているところです。

束石とは、建築の床束(ゆかづか)を支えるための石材であり、建物の基礎部分に配置される重要な要素です。

掘り炬燵(ごたつ)だったと思われる跡のまわりに、束石を設置していきます。

束石は、地面の湿気から柱を守る役割も果たしています。

水回りの基礎施工部分です。

解体してみると既存の基礎の状態があまり良くなかったため、新たにコンクリートブロックによる補強を行いました。

町家リノベーションでは補強が欠かせません。

担当大工と弊社所長が部分ごとに状況を見て判断し、適切な補強を行っています。

解体が終わり、本格的に木工事が始まります。
ここからどんどん変化していくことでしょう。

ふと見上げると、廊下の庇(ひさし)に蝉の抜け殻がひとつ、くっついていました。

家の内側と外側(庭)との距離が近く、自然と共生する京町家ならではの風景に心が和んだ筆者です。

blogged by 黒川京子