京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.6 【 完成編 後半 】
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杉皮塀のある町家、完成編【 後半 】をお届けいたします。
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写真は、キッチンから見た洋のリビング。
天井を撤去し、屋根に天窓を造作しました。
吹き抜けにすることで、大きな梁や柱、勾配の屋根裏が見え、
変化に富んだ空間が創り出されました。
そして天窓からの光がさらにその変化に彩(いろどり)を添えてくれます。
このお屋敷ならではの美しさが際だったように思われます。
夕暮れの陽光が、天窓から吹き抜けへ差し込み、
様々な梁影を映し出し、退屈しません。
ちなみに上部の丸太の梁は、以前から有った古いもの。
下に見える角材の梁は、デザインと補強を兼ねて造作した新しいものです。
見た目には、どちらも元々有った古い梁に見えますが・・・。
リビングスペースの両開き窓は、
新しく外格子を取付け、そのまま引戸にリフォームしました!!
既存の開き窓の建具に溝加工を施し、納めています。
室内各所に大正から昭和初期製造のアンティーク扉を設(しつら)えました。
扉の向こうは、和のリビングスペースです。
変色がなく、肌触りの優しい和紙の市松畳
オリジナルの京唐紙(からかみ)
新規造作のコンパクトでかわいい書院
個性豊かな和のリビングスペースの完成です。
押入の隣には、奥様の強いご要望であったミニマムな書院が完成しました!!
幼いお子様の様子を見ながらササッとメールを書いたり、本を読んだりと・・・
隠れ家のような空間で、作業にも集中できそうです。
襖(ふすま)は、伝統ある京唐紙(からかみ)へ貼り変えました。
柄(がら)はもちろん、紙色、紙質まで選んで、昔ながらの版木を使っての職人の手で作られる京唐紙です。
一点しか存在しない本物の逸品です!!
さあ、二階へどうぞ。
階段は傾斜を緩(ゆる)くし、お子様が登りやすいように
段数を増やしています。
手摺(てすり)も大工造作で製作したオリジナルです。
町家イメージの洗面台の完成です!!
右のアンティーク戸(二階トイレ入口)とのバランスを考え、
この家の風格に合う、”渋さ”のあるデザインに。
陶器製の洗面ボウルが載(の)る天板は、一見(いっけん)、木の板に見えますが、
水の変色や腐れを考慮して、木肌色の陶器タイルを採用しています。
照明・鏡・陶器製洗面ボール・タイルなどは、
『 大正期の町家の 趣(おもむ)き 』を表現するように、
設計デザイン担当者が現場で実際の色や風合いを確認して選んだものです。
一階和室の押入。
ここは二つあった階段の一つを撤去して収納にリフォームしたもの。
施主様のご要望をお聞きして、従来の中段のみの押入でなく、
洋服ダンス代わりにも使えるように
可動式の棚やネクタイハンガー、ズボンハンガー、パイプハンガーを設置しました。
一階キッチンの屋根上に空中庭園さながら!? 広いウッドデッキバルコニーを新設しました!!
正面にある目隠しの塀は、手前と奥に縦板を交互に並べて造作した
菖蒲張り(あやめばり)という和の木工仕上げです。
視線を遮(さえぎ)り、風を通します。
お子様が簡易プールに入って遊んだり、
外でちょっとした軽食をとったりできるように、
ここにもかわいいタイル仕上げの手洗い場を設置しました。
さて、最後のお掃除が済み、メンテナンスの日まで、
私達スタッフはこの家とお別れです!
築80年以上の風雅なお屋敷。
この家を引つ継がれた若きオーナー様のセンスと往時の細やかな
彫刻や加工が施された素敵なデザインのコラボレーション(融合)。
新たな80年間を超えて、また次に受け継がれていくことだと思います。
弊社の建築とデザインは、完全な復元ではありません。
残すべき良きものは残し、新しい部材が馴染むよう、
設計デザイン担当者と職人が奮闘した結果が、こちらのお屋敷です。
いかがでしょうか?
最後になりましたが、
ご信頼いただき、その多くを私たちにお任せくださった施主様に
心から深く、お礼を申し上げます。
誠に有り難うございました。
こちらの『杉皮塀のある町家』 は、弊社のホームページの
『 ピックアップ施工事例 Before&After 』にて、工事前と完成の様子を
詳しく確認することが可能です。
よろしければ、合わせてご覧ください。
『 ピックアップ施工例 』
(→ コチラ http://www.ginyusya.com/pickup/detail_08.html)
おつきあいいただき、ありがとうございました。
Blogged by 小川 還
( 監修 : 松山 一磨)
2014年3月16日 10:53 AM | カテゴリー:杉皮塀のある町家 VOL.6 | コメント(0)