『 最近の記事 』

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.6

「伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』」の続報です。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5

木工事が順調に進み、完成に近づいたある日。
施主様に、縁側と玄関土間に設置するライトをお選びいただくことになりました。

部屋の雰囲気作りに欠かせない「照明」
どのような照明デザインを選ぶかによって、部屋の雰囲気はガラリと変わります。

まずは吟優舎が保有しているアンティークペンダントライトの中から、施主様宅に合いそうなものをいくつか選定。 その後、ラインにてご提案しました。(写真は候補の一例です)

今回はお写真でお伝えしましたが、直接現場にお持ちし、施主様とともに選ぶ場合もあります。

縁側には、こちらのアンティークライトを選ばれました。

実際に設置した様子です。

かさの部分が花のようにふわりと広がるペンダントライト。
レトロな華やかさがあり、やわらかな光が廊下と庭を優しく照らします。

玄関の土間上には、丸みのあるアンティークライトを選ばれました。

設置した様子です。

ころんとしたフォルムから漏れる光が、タイルを埋め込んだ飾り土間とマッチ。レトロな趣を引き出しているのではないでしょうか。

昭和初期ごろのアンティーク照明は、古民家や京町家と好相性なことから、よくご提案させていただく照明のひとつです。

数回に分けてお伝えしてきた伏見御香宮の古民家リノベーション『蔵』、近々完成の様子をお伝えいたします。

blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.3

上京区西陣。
築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。


(前回のお話はこちらvol.1vol.2)



平成14年に「歴史的意匠建造物」、そして令和6年には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、由緒ある京町家です。

新しいおもてなし空間『あそんでいきなはれKYOTO』へと生まれ変わらせるため、着々と木工事が進んでいます。

床下部分の施工です。
この現場は、床下状況が良かったので、土(地面)にそのまま施工をしています。

築年数を経た京町家は、床下が湿気がちになり、シロアリの被害を受けていることが多々あります。その状況は現場によって異なりますので、その都度判断し、適切な処置を加えています。

前回vol.1でお伝えした束石の上に「鋼製束/こうせいづか(大引を受ける床束の一種)」を設置しているところです。

この上に、床組の重要な構造である「大引(おおびき)」を施工していきます。

断熱施工です。
床下には、冬の寒さだけでなく、夏の暑さにも有効な断熱性能素材を敷き込みました。

京町家は、冬の寒さが気になるところ。
吟優舎のリノベーションでは、必ず断熱施行を行なっています。

シルバーのものは掘りごたつの専用断熱材です。

以上、現場からの施工報告でした。

blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.2

上京区西陣、築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。 (前回のお話はこちらvol.1)

「本当の京都を、日本だけでなく海外の方にも知ってもらいたい。実際に生活している京町家の空間を楽しんでもらいたいんです」。

そう仰る施主様。

長年の思いを観光・食事・鑑賞が楽しめるプライベート空間『あそんでいきなはれKYOTO』として形にするため、解体工事が始まりました。

床が取り払われ、中が見渡せる状態になりました。

立派な京町家ですのでとても奥に長く、京町家ならではの「鰻の寝床」の形状がよく分かります。

建物の両サイドに窓がないのは、京町家の特徴のひとつです。

床下の束石(つかいし)を設置しているところです。

束石とは、建築の床束(ゆかづか)を支えるための石材であり、建物の基礎部分に配置される重要な要素です。

掘り炬燵(ごたつ)だったと思われる跡のまわりに、束石を設置していきます。

束石は、地面の湿気から柱を守る役割も果たしています。

水回りの基礎施工部分です。

解体してみると既存の基礎の状態があまり良くなかったため、新たにコンクリートブロックによる補強を行いました。

町家リノベーションでは補強が欠かせません。

担当大工と弊社所長が部分ごとに状況を見て判断し、適切な補強を行っています。

解体が終わり、本格的に木工事が始まります。
ここからどんどん変化していくことでしょう。

ふと見上げると、廊下の庇(ひさし)に蝉の抜け殻がひとつ、くっついていました。

家の内側と外側(庭)との距離が近く、自然と共生する京町家ならではの風景に心が和んだ筆者です。

blogged by 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.2

100年以上の歴史がある立派な町家のリノベーション、続報です。
前回までのお話→ vol.1

住まいにとっては大変重要となる、耐震構造部や断熱施工。
完成時には見えなくなりますが、出来る限りの対策を行なっている部分ですので、工事中の写真とともにご紹介いたします。

◆断熱施工

こちらは、1階ガレージ上となる2階の床組です。

通常1階と2階の間には、断熱材は施工されません。
ただしここは屋外と繋がったガレージになる部分です。

冬場、階下からの冷気があること。
また断熱性が高くなった2階で暖房をつけると、ガレージ空間との温度差により2階床が結露することが稀にあります。それを防ぐために断熱材を入れています。

床、壁、天井にも、断熱材をしっかり施工しています。

冬の寒さが厳しいと言われる京町家ですが、このような対策を行うことで、工事前と比較して室内の温熱環境がずいぶんと良くなります。


◆耐震補強

京町家の元々の木組には金物が使用されておらず、耐震面で不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

リノベーションにあたり、古い部分同士、また古い部分と新しい部分を繋いで補強するために金物を適所に取り付けています。

こちらは柱を抜いた箇所に新たな梁を入れ、既存梁と結束して強度を高めた部分です。

耐震性から見ても、金属である金物は大変有効です。

2階の床組です。
床を形成する主要な構造材を「構造用合板」という厚く強度の高い板材で直接繋ぐことで、剛床(ごうゆか)という耐震性の高い床組になります。

この上に、仕上げの床材(フローリングやコンパネ+フロアータイル)を施工します。
つまり床の厚みは、33~36mmになります。通常は12mmの構造用合板での施工にとどまることも多々あると思いますが、よりご安心いただける施工を心がけています。

blogged by 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.1

京都市に残っている町家は、都市化や近代化の影響により年々減少する傾向にあります。
一方で、まだまだ現役の町家も見られます。

他の区に比べて町家がまだ多く残っているといわれる下京区。
六条通にほど近い、大きな京町家のリノベーションを承りました。

現場では、すでに解体工事が進んでいます。

100年以上の歴史がある立派な町家です。
解体の途中で貴重な意匠がいくつか見つかりました。

今回は、その一部をご紹介いたします。

◆茶室跡

玄関を入った土間の横。
屋根のような天井が見られます。茶室(数寄屋)だったようです。

「数寄屋」や「数寄屋造り」は、もともとは茶の湯を行う建物を指しますが、現在は高級和風建築を指す場合もあります。





◆囲炉裏跡

石で囲われたこちら。
詳しくは分かりませんが、おそらく囲炉裏の跡だと思われます。

「囲炉裏跡かとも思いましたが、比較的新しめに見えますので、もしかしたら豆炭を使った掘りごたつ跡かも?推測の域は出ませんが…」と設計士談。





◆防空壕跡

和室の下に隠れていた、地下に降りる小さな階段。
どうやら、防空壕のようです。

築100年を超える町家では珍しくないようで、大工によると「古い町家にはよく見られるんですよ」とのこと。歴史を感じさせます。





◆碍子(がいし)

1階の天井を取ると、古い電線とそれを支える陶器製の碍子(がいし)が現れました。

「碍子」とは電線を支えるための器具で、火事にならないよう陶器で作られていました。
昭和30年ごろを境に減っていったようですが、古い町家では軒下や天井に残っていることがあります。





◆嫁隠し

町家を貫く土間「ハシリ」の中ほどに設置される衝立(ついたて)、「嫁隠し」。
「これより奥はプライベート」の目印と言われています。

数々の珍しい意匠が残っていた京町家。
施主様ご家族が住みやすいようにリノベーションしてまいります。

blogged by 黒川京子