『 最近の記事 』
名水で知られる京都伏見の「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」から徒歩数分。築100年ほどになる連棟の古民家リノベーション。いよいよ完結編をお届けします。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
vol.5
vol.6
vol.7
vol.8
昔ながらの町家に、必ず造られてきたものといえば「庭」。
解体後の座敷と庭
一日中室内が薄暗い京町家にとって、窓は美しい景色を愛でるだけでなく、通風と彩光のためになくてはならないものでした。
庭があることで家の中に新鮮な空気と光を取り込むことができるのです。
吟優舎のリノベーションにおいても、庭は大切な空間。庭を囲むように居間、浴室、洗面室、お手洗いを配置し、風と光を最大限に取り込むプランを基本としています。
こちらのリノベーションでも、施主様がご両親から受け継がれた庭を中心にしたプランをご提案しました。
リノベーション前の廊下とお風呂です。
ゾーニングはそのままに、美しく整え、新しい意匠も盛り込みました。
廊下の入口は、茶室の入口=火灯口(かとうぐち)をイメージしたアーチ開口に。
お風呂への期待感が高まるようなアプローチを意識しています。
アーチ開口手前のスペースには、アンティークショップでご購入された本棚がすっぽり収まっています。この上にはライトを置きたいということで、コンセント差込口も設置しました。
ブログvol.5でお伝えしたように、施主様には工事前に家具のサイズをあらかじめお知らせいただきます。それに合わせてコンセントの位置や壁の位置を決定しますので、失敗がありません。
廊下の幅はリノベーション前よりも広く取り、格子状の意匠を凝らした天井にはダウンライトを仕込みました。
少し狭さを感じさせていた脱衣所も、すっきりと広くなりました。
システムバスは、施主様がショールームにて選ばれた、タカラスタンダードの「GRANSPA」。掃除しやすい床材が魅力です。
参考:ブログvol.2
そして一番のポイントは、湯船から臨む景色です。
「庭を眺めながら浸かるのが楽しみです」と仰っていた施主様。
新しいお風呂を使われた後には「気持ち良かったです、まるで別世界でした」と喜んでおられました。
お風呂のリノベーションでは、窓からの風景を楽しみにされる施主様も多くいらっしゃいます。
吟優舎では、庭への眺めをよくするために、浴室の窓を出来るだけ浴槽に寄せて低く設置するようにプランニングしています。
庭を囲む塀は、焼き板にし落ち着きのある印象に。
いくぶん鬱蒼としていた庭は、庭師の手により風情が感じられる風景へと生まれ変わりました。
四季によって移ろう自然の景色は、飽きることがありません。
日々の暮らしに潤いをもたらすことでしょう。
最後に、隣家にお住まいの中で行われた工事。施主様には大変なご苦労であったことと思います。終始にこやかにご対応くださり、心より深く御礼申し上げます。
誠に有り難うございました。
blogged by 松山一磨 & 黒川京子
2024年11月6日 5:13 PM |
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京都伏見の「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」近くの古民家リノベーション。今回は完成編②をお届けします。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
vol.5
vol.6
vol.7
こちらは、新しくなったキッチンです。
施主様がタカラスタンダードルームにて選ばれたホーローキッチンが設置されました。
(その様子はvol.2でご紹介しています)
ホーローキッチンと壁のタイルは明るい色で統一されているので、すっきりと清潔感があります。
あえて高いところに設えた、キッチン上部の窓。昼間はここから自然光が入り、明るく手元を照らします。
大変読書家でいらっしゃる施主様ご夫妻。以前からお持ちの本棚、そして新たにご購入された本棚は、あらかじめ決めていた位置に設置されました。
リノベーション前の室内
リノベーション後
両サイドに窓がなく奥行きが深い連棟の町家。
奥庭に面した開口をなるべく広く取ることで、開放感が感じられる室内になりました。
手前の部屋と奥の部屋は3連の引き込み戸で仕切ることができ、戸をしまえば最大限に光を取り入れることができます。
施主様は、庭の草花がお好きです。
そこで庭の緑を風景の一部として借りるいわば「借景」を意識。
庭に面した窓を大きめに、そして廊下も広めに設定しました。
施主様によると、小学生のお孫さんは輝くような緑のお庭が大変お気に入りだそう。
廊下に座ってずっとお庭を眺めておられるのだとか。
『おばあちゃん、こんな綺麗な庭は見たことがない』とまるで大人みたいな言い方をすると、笑いながら楽しくお話ししてくださいました。
施主様の喜ばれるお声を聞くと、私どもも大変嬉しい気持ちになります。
blogged by 黒川京子
2024年10月29日 3:17 PM |
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「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」は、伏見全町の総氏神であり、環境省「名水百選」に選ばれた「御香水(ごこうすい)」が湧くことでも有名です。
こちらにほど近い古民家リノベーション、完成編①をお届けします。
前回までのお話はこちら→
vol.1
vol.2
vol.3
vol.4
vol.5
vol.6
改装前
施主様の家は、築100年ほどになる連棟の京町家。
30年ほど前に改装され、町家らしい面影はなくなっていました。
羽柴、福島、小早川など大名ゆかりの地名が残るこの地域には、かつて坪庭付きの立派な町家が多く残っていたとか。
年月を経るうちに周りの家は次々と現代風の家に変化。そんな中でも施主様は「自分の住まいを直すなら、町家風に」と考えていたそうです。
ご依頼を受けた吟優舎がご提案したのは「蔵戸をイメージした町家リノベーション」。
玄関扉にアンティークの蔵戸を使用し、ファサード(正面外観)には町家らしい格子を設るプランです。
ご提案したプラン図
ご契約後、実際に使用するアンティーク蔵戸を施主様にご確認いただきました。
使い込まれた味わいが感じられる、かなり広めの蔵戸です。
金具部分などディティールにも趣がある蔵戸。全体の傷みを補修し、磨き上げてから設置します。
蔵戸というと重く古めかしいイメージがあるのではないでしょうか。
吊り引き戸にすることで、動きは大変なめらかで軽やか、スムーズです。
戸を開ければ、墨モルタルにモザイクタイルを埋め込んだ土間が現れます。
アンティークペンダントライトの光が優しく照らす、大正モダンが薫るエントランスです。
改修前とは大きく変化したファサード。威風堂々とした蔵戸です。
「ご近所の方が前を通るたび『すごい!何が起こったの!?』と覗いて行かれるんですよ」と笑顔の施主様。
カメラマンによる撮影時にも、ご近所の方の「すごいわねー!」という驚きの声が。
思いがけず、嬉しい評判を耳にすることができました。
blogged by 黒川京子
2024年10月17日 6:07 PM |
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上京区西陣。
築100年以上の歴史がある京町家リノベーション『雅』、続報です。
(前回のお話はこちらvol.1、vol.2)
平成14年に「歴史的意匠建造物」、そして令和6年には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、由緒ある京町家です。
新しいおもてなし空間『あそんでいきなはれKYOTO』へと生まれ変わらせるため、着々と木工事が進んでいます。
床下部分の施工です。
この現場は、床下状況が良かったので、土(地面)にそのまま施工をしています。
築年数を経た京町家は、床下が湿気がちになり、シロアリの被害を受けていることが多々あります。その状況は現場によって異なりますので、その都度判断し、適切な処置を加えています。
前回vol.1でお伝えした束石の上に「鋼製束/こうせいづか(大引を受ける床束の一種)」を設置しているところです。
この上に、床組の重要な構造である「大引(おおびき)」を施工していきます。
断熱施工です。
床下には、冬の寒さだけでなく、夏の暑さにも有効な断熱性能素材を敷き込みました。
京町家は、冬の寒さが気になるところ。
吟優舎のリノベーションでは、必ず断熱施行を行なっています。
シルバーのものは掘りごたつの専用断熱材です。
以上、現場からの施工報告でした。
blogged by 黒川京子
2024年9月12日 5:58 PM |
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京都市に残っている町家は、都市化や近代化の影響により年々減少する傾向にあります。
一方で、まだまだ現役の町家も見られます。
他の区に比べて町家がまだ多く残っているといわれる下京区。
六条通にほど近い、大きな京町家のリノベーションを承りました。
現場では、すでに解体工事が進んでいます。
100年以上の歴史がある立派な町家です。
解体の途中で貴重な意匠がいくつか見つかりました。
今回は、その一部をご紹介いたします。
◆茶室跡
玄関を入った土間の横。
屋根のような天井が見られます。茶室(数寄屋)だったようです。
「数寄屋」や「数寄屋造り」は、もともとは茶の湯を行う建物を指しますが、現在は高級和風建築を指す場合もあります。
◆囲炉裏跡
石で囲われたこちら。
詳しくは分かりませんが、おそらく囲炉裏の跡だと思われます。
「囲炉裏跡かとも思いましたが、比較的新しめに見えますので、もしかしたら豆炭を使った掘りごたつ跡かも?推測の域は出ませんが…」と設計士談。
◆防空壕跡
和室の下に隠れていた、地下に降りる小さな階段。
どうやら、防空壕のようです。
築100年を超える町家では珍しくないようで、大工によると「古い町家にはよく見られるんですよ」とのこと。歴史を感じさせます。
◆碍子(がいし)
1階の天井を取ると、古い電線とそれを支える陶器製の碍子(がいし)が現れました。
「碍子」とは電線を支えるための器具で、火事にならないよう陶器で作られていました。
昭和30年ごろを境に減っていったようですが、古い町家では軒下や天井に残っていることがあります。
◆嫁隠し
町家を貫く土間「ハシリ」の中ほどに設置される衝立(ついたて)、「嫁隠し」。
「これより奥はプライベート」の目印と言われています。
数々の珍しい意匠が残っていた京町家。
施主様ご家族が住みやすいようにリノベーションしてまいります。
blogged by 黒川京子
2024年8月15日 4:12 PM |
カテゴリー:( 1. お知らせ ) |
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