『 最近の記事 』

京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.3

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いつのまにやら秋めいて、涼風が心地よい季節となりました。

本日は、改築中の杉皮塀のある町家へ、ご案内いたしましょう。

※過去ブログはコチラ→ VOL.1・ VOL.2

 

〜 杉皮塀のある前道 〜

 

塀の修復から始まった、改築中のこちらの現場。

塀ぎわの山石は、川の渓流を思わせる涼やかさで、

植えられたグリーン達も成長し、元気いっぱいです。

 

〜 塀ぎわのグリーン 〜

 

完成直後の塀の様子をご報告したのが約4ヶ月半前、

家の解体をお知らせしたのが約3ヶ月前のことでした。

 

早速、改築進行中の家屋をご覧ください。

玄関土間から1歩進みますと…

 

ちなみに以前はこうでした。

 

(before)リフォーム前 玄関まわり

 

それがこうなりました。

 

(工事中)玄関土間より内部を見る

 

夕方の工事現場の室内が、明るいのはなぜ?

 

…スカッと2階屋根まで見わたせる、

吹きぬけのリビングルームなのです。

 

(工事中)吹きぬけを見上げる

 

1階と2階の天井を両方とも撤去し、横に並ぶ梁と

屋根の勾配が美しい空間を造りました。

新たにしつらえた天窓からは、光が降り注ぎます。

 

(工事中)天窓から降り注ぐ光

 

さらに、少しでも多くの外光を室内へと導くため、

天窓の窓枠は、室内側が広いラッパ形でオーダーメイド。

 

(工事中)吹きぬけの屋根の天窓

 

エコな照明法のひとつとして提案させていただき、

キッチンにも、新たに天窓をもうけました。

 

(工事中)キッチンの天井にも天窓

 

「明るい吹きぬけなんて!京町家らしくない気がする。」

とおっしゃる方もおられるのではないでしょうか?

 

ご安心ください。

京都の町家には必ず、大きな吹きぬけがありました。

台所です。

おくどさん(漢字だとお竈さん、つまりカマド)の煙と熱を外へ

逃がすため、また、料理する手元を明るくするためです。

 

現代のキッチンに、そうした配慮は必要はありません。

設計デザイン担当者の提案により、明るい吹きぬけは

「家族が集う明るいリビング」へと再生されました。

 

〜 緑の庭と、奥の縁側 〜

 

改築中であっても、独特のやわらかな質感を感じさせる

大きくて立派で、静かな和のお屋敷です。

 

〜 奥の縁側の、味のある和の窓 〜

 

工事中も定期的に設計デザイン担当者が現場へ訪れ、

ひとつひとつ仕上がりをチェックし、色やサイズ

などを改めて吟味していきます。

お客様がご希望されているイメージを再構成し、

よりベストな状態へと修正していくのです。

 

弊社の大工さん・職人さん・設計デザイン担当者が

お互いに才能を認め合い、最高レベルの仕事を目指して

取り組んでおります!

 

しばらく、階段製作や小書斎の木工工事が続きそうです。

加えられてゆく設計デザインの新発想に、ご期待ください。

 

ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました。

 

Blogged by  小川 還

( 監修 : 松山 一磨)

 

 

左京区北白川事務所 Vol.5

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・吟優舎 北白川事務所 改装編 第五弾!

 

左京区北白川の事務所の続報です。

いよいよ外構と建物外壁の工事が始まります。

初めて出会った時は、こんな建物でした。

 

(before)改装前の北白川事務所 外観

 

こちらから以前の状況がご覧いただけます。

(→ Vol.1)  (→ Vol.2)

(→ Vol.3)  (→ Vol.4)

 

事務所の近くを流れる白川

 

北白川事務所は、比叡山へ続く道路沿いに建ち、

山・川など緑いっぱいの豊かな自然に囲まれています。

 

(before)北白川事務所と山

 

この場所にふさわしい外観は? …色は? …雰囲気は?

 

その場で決めて、その場で工事!という段取りですので、

設計デザイン担当者をはじめスタッフ全員、悩ましい選択の連続でした。

 

(before)塗装前の塀。窓前に、外壁色見本を設置

 

左官職人が、側面から塀を塗り始めます。

神戸北野の旧ハンター邸の塀を参考にした丸い穴には、アイアン製のモチーフ。

色は真白。しっくい状に盛って塗り、コテの痕跡を残す仕上げです。

 

コテの動かし方の次第で、和風にも、洋風にも見えます。

ここで、「どんな風に跡を残すべきか」が争点となり、

侃々諤々(かんかんがくがく)の議論に。

 

(after)塗装後の塀。松山所長が、風合いをチェック

 

コテ跡がどんな風に見えるかを実際に試してみて、確認を繰り返します。

設計デザイン担当者が、短くランダムに横に流れる仕様に決定!

同時に、

建物窓に並べた外壁見本を参考に、色と質感を選び、

太陽光の下でほんのり茶系の、目に優しい壁に決定。

 

木製窓は、職人がつくった木の窓枠と複層ペアガラスを

組み合わせた弊社オリジナルの窓です。

耐久性や防水力をチェックする実験場、でもあります。

最終的に、木枠を濃茶色の塗料で仕上げるよう、

設計デザイン担当者がデザインしました。

 

(本日のafter)北白川事務所 塀完成後の外観

 

塀の塗り終わりに、改装前とほぼ同じ角度から写真を撮りました。

皆様の印象は、…少し変わりましたか?

(資材等でごちゃごちゃ感がありますが…キレイにしますね!)

 

 

次回は、完成後の姿をご披露できると思います。

おつきあいいただき、ありがとうございました。

 

Blogged by 小川 還

 

 

 

京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.2

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目にも鮮やかな緑の季節です。

 

堀川通りより見た御所

 

「杉皮塀のある町家」へやってまいりました。

前回ご報告した、杉皮塀のリフォーム完了後の、続報です。

(※初回ブログはコチラ→ VOL.1

 

(after)玄関前より杉皮塀、歌舞伎門

 

ついに家本体のリフォーム工事の準備が整いまして、

解体前日のチェックにお邪魔いたしました。

 

お施主様ご夫婦にとっては、現状での見納めです。

お子様も小さく、片付けにいらっしゃるだけで大変なのに、

気持ちのよい笑顔で迎えてくださいました。

捨てるもの、残すもの、それぞれを色テープで分別し、

取り違え無いよう邸内を念入りに確認してゆきます。

 

 

さて、リフォーム前の家の様子をどうぞ。

…端正な美宅です、リフォーム前ですけれども是非ご覧ください。

 

お施主様のお祖父様が購入されてすぐ増改築され、

次に、ご両親の時代に水回りや空調の改築があったようです。

今回は、全体のリフォームとなります。

 

(before)正面から見た7面の屋根

 

こちらのお屋敷の特徴は、

2つの玄関と過去の増築で複雑になった屋根です。

解体してみるまで構造がわからず、気は抜けません。

 

(保存箇所)来客専用玄関

 

玄関のうち1つは、お客様専用の格式高い玄関。

 

(保存箇所)踏み石と障子

 

足を踏み出すと、気が引き締まります。

 

(before)家族用玄関

 

もう1つは、家族の玄関。

 

(before)門前から続く、趣き深い石畳

 

普段の勝手口でもあり、つい入ってみたくなる雰囲気です。

…お邪魔いたします。

 

(before)邸内と上がり框(あがりかまち)

 

上がり框(あがりかまち)から先は意外にも、現代的な空間でした。

 

(※上がり框/あがりかまち=土間から床へ上がるための一段高い板段。

視線が集まるため、良質な木目の美しい木材で製作される)

 

(before)上がり框の対面側

 

上がり框(あがりかまち)より振り返れば、昔の屋根としっくい壁が

あり、現代と過去のちょうど境目にいる心持ちです。

 

少しスピードをあげて、改築予定部分をご案内しましょう。

 

(before)現代風のダイニングキッチン

 

明るい木目調のフローリングに、システムキッチン。

水回りを使いやすくするために以前、増築された部屋です。

配置を変え、家とつり合うように古めいた仕様に変更されます。

 

(before)玄関脇の洋室

 

玄関を入ってすぐの洋室は、神戸の西洋館に似たデザインで、

壁は丸みをおび、天井へとなめらかに続いています。

壁紙・絨緞など表面の仕上げは新しいものになっていました。

木製の窓枠やお洒落なガラスは、そのまま残る予定です。

 

(before)茶の間。押入れの中には階段

 

お隣の茶の間からは、寝転べず不評だった掘りごたつが撤去され、

階段は、もっと傾斜がゆるいものと付け替えられます。

 

(before)網代(あじろ)の戸棚

 

押入れの奥は、裏手にある廊下側から使えるように浅く仕切られています。

その戸棚の戸は、檜(ひのき)の薄板を斜めに編んだ、手間のかかる高価な

「網代(あじろ)」の仕上げでした。

 

(before)来客専用の階段

 

お座敷と仏間の奥に、また階段がありました。

来客専用で現在は使われておらず、今回、撤去されます。

 

 

では、2階へまいりましょう。

1階とそっくりなお座敷と、洋間が並んでいます。

 

(before)お座敷と洋間の書斎

 

現代風に改築された洋間には、窓際の押入れを改造した

小さな書斎があり、古い机が置かれていました。

ここは、1階に場所を移し、設計担当者の指示によって再構築されます。

 

(before)2階。お座敷と洋間の欄間の比較

 

家全体で統一された形の欄間があり、洋間だけは、

エアコンで空調するためにふさがれていました。

過去に行われた改築は、どちらかと言えば、見た目より

実用本位の改造だったのでしょうか。

今回は、こういった点も解消されると聞いております。

 

(before)廊下のアンティーク照明

 

珍しいデザインに、設計担当者も思わず歓声をあげていました。

この照明は、外の杉皮塀の上に取り付けられた照明と

同じ時代の作品のように思われます。

 

(before)古い電灯のスイッチ

 

古い照明器具がある…つまり配線も古い、ということでしょうか?

新旧が入り交じったスイッチは、使いにくそうでした。

漏電による出火を防ぐために、配線までスッキリ整える必要があるようです。

 

(before)1・2階の廊下アップ

 

部屋をめぐって歩いた廊下は、昔のままの美しい木目であり、

角は寄木(よせぎ)にされ、長い1枚板を丁寧に組んであります。

表面はそのままに。

裏側には断熱材を施工して、床下からくる寒気をふせぎ、

より快適になる予定です。

 

2階の廊下からは手すりの柵がはずされ、屋根の上に

広いウッドデッキが新設されます。

 

(before)1階の廊下

 

庭の緑が目に心地よく、涼しい風が吹き抜けてゆきます。

この環境はそのまま、残されるはずです。

 

 

どんなスタイルも必ず、いつかは時代遅れになるもの。

されど、いくら古くとも、留めておきたい部分はそのままに。

…こだわりは受け継がれ、家屋に残ります。

 

家を購入したお祖父様やご両親は、その時代の最先端を集めて

自分の住まいをつくりあげられたのでしょう。

こんどはお施主様が、今の感覚でつくり変える番です。

 

弊社の設計担当者は、

目の前のお施主様のご希望をうかがいながら、

お祖父様が残された和のアンティークと対話するつもりで、

間取りはもちろん、紙・石の1つ1つまで膨大なサンプルを

取り寄せて吟味してきました。

 

古くても心には新しく感じられ、

新しくても古く懐かしい家に…。

徐々に明かされる全貌にご期待ください。

 

おつきあいいただき、ありがとうございました。

 

Blogged by 小川 還

 

 

 

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建築こぼれ話 その3

「ピッタリ作らない、という知恵」

 

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今回は、高級な網代(あじろ)戸の棚がありましたので

思わず、戸を開いて中をのぞいてみました。

 

(before)網代(あじろ)の戸棚の上部

 

最上段には、天板がありません。

また、背板も少しずらしたような納まりです。

 

試しに棚と押入れ、両側の戸を開いてみると、

強めの風が吹きぬけてゆきました。

…湿気対策だったようです!

 

押入れなど、布団からの湿気がたまりやすい所では

細かく仕切って空間を密閉しない、という昔の知恵です。

 

宮大工さんの書いた本によると、

日本の大工さんは古代から、視線がむかう部材の

美しさを大変気にかけたそうです。

逆に、見えない部分は、地震や台風での揺れや

湿気を逃がす構造に注力していました。

 

もちろんピッタリに作る技術力はあったのですが、

わざと、ピッタリ作らない部分を残したのです。

 

機会がありましたら、町家の土台の柱を見てください。

ゴツゴツした石にパッとのせただけの雑な仕上げに見えますが

適度にすきまができて、湿気がぬけます。

もし、石の上面にピッタリ合うように柱を削ると、

見た目はいいのですが、水にぬれた時に乾きません。

 

現代の押入れは、すきまが無いからカビが生えやすいそうです。

すのこを使って風の道を開けることをお奨めいたします。

 

…では、またお目にかかれますよう。

 

 

 

京都市左京区『杉皮塀のある町家』改修 VOL.1

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今回は出町柳、「杉皮塀のある町家」へご案内いたしましょう。

 

お客様の祖父母様の世代にご購入されたというお話でしたので、

築年は不詳ながら、おそらくは大正〜昭和初期ごろでしょうか。

 

しっくい壁に傷みは見られるものの、繊細な彫刻や美しい建具など、

すみずみまで洗練された上品な雰囲気です。

 

(before)杉皮塀のある町家 正面側

 

(before)来客用玄関の脇、梁に施された彫刻

 

(before)家族用の勝手口の格子扉

 

ところが、お隣りの家の解体が決まり、工事の際に、

片側の塀(へい)も無くなってしまいました。

そのため、新たに独立の塀の造作を希望されておりまして、

まず、ひどく傷んだ既存の門扉と塀を修復する運びと

なったのです。

 

(before)塀の片側を失った、修復前の歌舞伎門

 

(before)家までの通路と失われた塀の跡

 

(before)歌舞伎門の腐敗箇所

 

(before)歌舞伎門の腐敗の様子のアップ

 

 

「祖父母の代から続く杉皮張りの塀のたたずまいを

   活かした、この家にふさわしい塀を造りたい」

「通路に以前あった懐かしい照明器具を復活させたい」

 

それが、お施主様…この家を受け継ぐ若いご夫婦のご希望です。

 

保管されていた古い照明器具は、さびてはいるものの

和製アンティーク独特の美しさは失われていません。

シンプルながら、手づくりの曲線の優雅さに癒されそうです。

職人がさびを落とし、通路の幅にたりない部分には新しくあつらえた

アイアン細工の足を溶接、再生の準備を進めます。

 

(before)保管されていた、古い照明器具

 

(after)塗装され、修復が済んだ古い照明

 

 

この作業と同時進行で、設計担当者ら2名が、京都市内の

塀という塀を2日間見て歩き、修復プランを練り上げました。

杉皮塀の古き良き、美しいデザインとはいったい何なのか、

本質を探り、得た結論がこちらです。

 

設計したプランの、完成イメージ画

 

 

このたびのリフォームによって、

無くなっていた塀が新たに新設され、歌舞伎門の腐った箇所

は新材に差し替えられ、通用口建具はもともと使われていた

扉を利用して修復・補強されました。

 

コンクリートブロックで新設された塀

 

ブロックの間にモルタルを詰め、鉄筋を固定しています

 

修復前の歌舞伎門と化粧前のブロック塀

 

歌舞伎門の屋根周りの修復箇所のアップ

 

歌舞伎門の部材。腐った部分を切り取ったところ

 

新材に差し替えられた修復後の歌舞伎門。塀と門はつなげられ、上から見て、コの字形に配置されます

 

 

リフォーム後の姿をご確認ください!

 

門の格子扉は、磨かれ、戸車で動きが軽くスムーズになりました。

 

(after)修復された格子扉を開いたところ。左側には格子の背後に閉じて視界を遮るための木戸が見えています。

 

傷みかけていた木製敷居は、モルタル+小石の洗い出しに

変わり、水や虫にも負けません。

 

(after)修復された敷居。モルタルと小石を混ぜて型枠に詰め、完全に固まる前に、表面に水を流して小石を洗い出します

 

総仕上げは、門扉と塀全体に塗られた防腐剤入りの浸透性塗料です。

日ざしや風雨に長年さらされ、乾燥していたせいでしょうか?

塗料製造元に指定されている必要量の2倍の量、

なんと2リットルもの吸い込みがありました。

 

(after)修復された格子扉と塀を道路側から見たところ

 

(after)修復された格子扉のアップ

 

(after)修復された杉皮塀のアップ

 

新設した塀は、日影側にあるため水はけを考えて杉皮が短めにされ、

足元には石(京都の山石)を敷きつめた溝が掘られました。

山石の下は地面なので樹木や花を自由に植えることができますし、

白いしっくい壁と杉皮の渋く暗い色彩の対比により明暗が生まれます。

単なる通路としてではなく庭としてご覧いただくための演出です。

デザイン性を高めるため、杉皮としっくい部分の幅のバランスに

最後までこだわりました。

塀のてっぺんには、設計者が意地で探し出した、通常のルートでは

販売されていない珍しいスタイルとサイズの瓦が使われています。

 

(after)新設した塀の足元は、石を敷きつめた溝

 

(after)もともとあった石畳の通路と、新設した山石を敷きつめた溝

 

(after)塀のてっぺんの屋根瓦。杉皮が主役なので、瓦のデザインは控えめに、シンプルで美しいものが選ばれました

 

水道栓はこの溝の脇に移設され、小さなお子様も気軽に足を

洗えますし、真夏は通路に打ち水をすれば涼しくなります。

蛇口は、レトロ感に合うデザインを選んだものです。

 

(after)新設された水道蛇口

 

 

こうして、門扉と杉皮の塀が完成いたしました。

門扉を開けば、昼は青空に浮かんだ照明のアーチが、

夜は、照明のやわらかな光が出迎えてくれることでしょう。

 

(after)夕暮れに照明をつけて、門ごしに見た塀と通路

 

(after)通路に復活した、懐かしい照明の灯り

f

(after)新しい塀にある足元照明の光は、通路の照明光と一体化し、石やしっくいをやわらかく輝かせます

 

(after)日没後、門から玄関へと歩き、道路側をふりかえったところ

 

おつきあいいただき、ありがとうございました。

 

…次回は、家のリフォームについてお届けいたします。

設計担当者が奮闘しております、ご期待ください。

 

Blogged by 小川 還

 

 

 

京都市北区『出格子の町家』に改修 完成です!!

全編6回に渡る『京都市北区町家改修ブログ』もいよいよ今回が完成最終編となりました!!

ブログを綴(つづ)っている私自身が、このブログを通して、私たちの会社や私たち自身の思いなど、気づくことが多くあり、ちょっとビックリした次第です。 このような機会を与えて下さった、今回この工事の施主様である橋本様ご主人様、並びにご家族様に、心から深くお礼申し上げます。

誠に有り難うございます。

さて、以下はその完成写真です。

この工事は、施主様の熱く真剣なご要望を形にしたことと同時に、僭越(せんえつ)ではございますが、デザインしたプランナー新造さんとそれを形にすべく施工にあたった弊社協力業者さん達のまさに精一杯の結晶でもあります。

1ケ月以上に及ぶ工事の間、終始にこやかに暖かく見守るように接してくださった施主ご主人様、お母様、奥様、ご長男様に最後に重ねてお礼申し上げます。

ほんとうに有り難うございます。 またまだまだ至らない私どもでは御座いますが、どうぞ末永いご贔屓の程を心からお願い申し上げます。

吟優舎 松山 一磨(いつま)

夕暮れ時の完成外観。外構(がいこう)土間は、駐車場スペースと玄関アプローチ、その他の3箇所で素材を変えてデザインしました。

解体した歌舞伎門に在(あ)った丸い外灯をリフォームして勝手口に設置。メイン玄関には四角のステンドグラス外灯を設置。丸い外灯と暖簾(のれん)の丸いデザインがマッチしてなんとも嬉しいかぎりです!!

左側隣家との境界に在(あ)ったブロック塀は、“京あぜくら”という塗壁で仕上げました。 また二階のルーバー窓を格子で隠し、簾(すだれ)を交換しています。

出格子の建具は、既存の外壁、木部との調和を考えて、古色の木目出しの塗装を施しました。メイン玄関外灯はステンドグラスの外灯を採用。点灯するとステンドグラスのグリーン色が壁面にほのかに反映されます。

出格子の内観です。硝子(がらす)に写るシルエットがなんとも京都らしく情緒感たっぷりです?!  いかがでしょうか?

外構土間は、石にこだわってデザインしています。墨入り土間コンクリートに角形鉄平石。アプローチには粗肌色御影石。その他土間と巾木には、粒石の洗い出し。 10年後、20年後の変化が楽しみな素材です。

玄関敷居は、粒石洗い出しで製作。土間の御影石のむっくり感は私のお気に入りのイメージです。施主様とご一緒に石屋さんへ赴(おもむ)いて選んだ御影石。 施主様と共にこだわった結果の仕上がりです。

フローリングは、フランスボルドー製の“なぐり加工”のパイン(松)材を採用しています。この個性豊かな表情と存在感は、他のフローリングではなかなか出せません。施主様お気に入りの素材です。また框もそれに合わせて“松材”で製作。印刷加工の建材では表現できない無垢材の落ち着きと情緒があるように思います。

文様(もんよう)、和紙、印刷色を全て選べるオリジナル唐紙(からかみ)で製作した襖(ふすま)とアンティーク建具です。弊社がご提案する特徴的デザインの素材です。町家改修に自然に馴染(なじ)むデザイン素材ではないでしょか?またその間にある柱は、弊社スタッフの植村が1日がかりで既存柱を磨いて補正再生したものです。

天井は、四角枠に桟木を造作して色の違う和紙調クロスを施工しています。写真では分かり難(にく)いのですが、ダウンライトの縁(ふち)も施主様の手でクロスの色に合わせて着色されています。

出格子出窓台の素材は下駄箱と同じものを採用。とっても個性的で雰囲気のある木肌柄です。壁面クロスは和紙クロスを採用しています。紙と木、自然な素材の癒(いや)しを感じます。

 

ようやく完成です。 施主様、住まわれながらの長期の工事。本当にしんどい期間だったはず。そんな素振(そぶ)りは、終始かけらも見せず、毎朝笑顔で迎えてくださったこと、心からお礼申し上げます。 誠に有り難うございました。