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京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.1

今回からご紹介するのは、京都東山の住宅街に佇む一軒家。

施主様ご夫妻の奥様が、小さい頃に住まわれていたご実家です。奥様のご両親がお住まいだったこの家をリノベーションし、ご夫妻の終の住処にしたいというご要望を承りました。

「私の父が子どもの頃に建った家なんです。もう90年以上経っているのかな。せやから、どうなるのかなと不安もあるけど、きっと上手に直してくれはると思って」

穏やかに語る明るくおしゃれな奥様と、物静かで優しそうなご主人。ご夫妻のお好みをよくご存知の息子さんが、インターネットで弊社を見つけ、薦めてくださったといいます。

築90年以上にもなるこのお家は、いわゆる古民家といわれる物件。外から見ると波板にツタが這っていて、確かに年月を感じさせます。

しかし古い梁や建具を生かして再構成すれば、きっとべっぴんさんの素敵なお宅になる!と直感した弊社所長。施主様ご夫妻のお好みに合わせ、町家風デザインを生かしたリノベーションを施すことになりました。

実はこの家、何度かの改修を経て物置が増築されるなど外観が変化していますが、もともとは町家だったと思われます。

【京町家の定義とは?】
「通り庭」「火袋」「出格子」のいずれかがあることです。



「通り庭」とは、玄関から裏庭までまっすぐに通る土間のこと。昔は裏庭にいったん出てから、お風呂とお手洗いがありました。通り庭にはおくどさん(かまど)が置かれたため、炊事の火が燃え移らないよう天井が吹き抜けになっており、その空間を「火袋」と呼びました。

改修前のキッチンです。天井は吹き抜けではなく、閉じられてしまっています。

ちょっと裏庭へ出てみましょう。

2階の端につけられた、小さな窓。今は裏庭からしか確認できないこの窓は、火袋に取り付けられた高窓です。町家の火袋には、このように灯り取りのための窓が必ず付けられていました。これはまぎれもなく火袋があった証拠です。

そこで、キッチンの天井に吹き抜けを再現し、最大限に光を取り込むプランを立てました。明るいキッチンに生まれ変わるのが今から楽しみです。

また施主様がご高齢になった時のこともふまえて、今後も暮らしやすくする工夫を盛り込んだプランをご提案いたしました。

時を積み重ねた一軒家が、レトロモダンな京町家に生まれ変わる過程を少しずつご紹介していきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

blogged by 黒川京子