『 最近の記事 』

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.7

京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』
いよいよ完成編をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6

築90年以上も経つ古い町家が、リノベーションによって町家らしい姿に生まれ変わりました。 ぜひご覧ください。

リノベーション前

昭和の改装で増築しサッシなどが取り付けられた、リノベーション前の町家。

そしてリノベーション後はこちらです。

木製格子がついてガレージも新たになり、色調も統一され落ち着いた印象に変化しました。

新しいのに時代はむしろさかのぼったような、そんな雰囲気が感じられるのではないでしょうか?

では中をご案内いたします。

改修前の玄関の様子です。ごく一般的な古民家のものでした。

そして新しくなった玄関は…

玄関の土間に墨モルタルを流し込み飾りタイルを入れることで、モダンさも可愛らしさもある表情に変化しました。

飾りタイルの玄関土間は、帰ってきた時にどこかホッとするようなぬくもりがあります。

なぐり調の式台も味わいがあります。
夏には裸足で歩けば、木の質感を存分に感じられてとても心地よいことでしょう。

アンティーク風のペンダントライトが、優しく玄関を照らします。

このライトがあることで、可愛らしさがぐんと引き立つと思いませんか?

玄関の横は小さな洋室になっています。
和室と洋室の間に採用したのは、磨き上げられたアンティーク建具。
古いものを手入れして使うと、新しいものにはない味わい深い雰囲気の決め手となります。

前回お伝えしたように、トイレは玄関横のこちらに再設定しました。
まだまだお元気な施主様ですが、10年後のご年齢や生活スタイルを想定し、ご提案させていただきました。

新たに整えたガレージから、室内を見たところです。
車だけでなく電動自転車用も置けるようになっています。そのためのコンセントも設置いたしました。

アンティーク建具を開けると、和室そしてLDKへとつながっています。
京町家らしい奥に長い間取りが、現代の暮らしへと生かされています。

和室の襖は京唐紙に張り替えました。

京唐紙の面白い点は、何と言っても紙の色とインクの色でお家の雰囲気をガラリと変えるところ。

こちらのお宅は紙もインクも落ち着いた色調をお選びになったので、シックモダンな雰囲気に仕上がっています。

庭に面したLDK

vol.4の回で、施主様が京都御池タカラスタンダードショールームで選ばれたシステムキッチンです。

家電収納棚や柱の色など全体的な色調とよくマッチしています。キッチンの壁面にはモザイクタイルも貼られ、すっきりとした風情にまとまっています。

このLDKにはテーブルと椅子、ソファとテレビを置かれる予定です。

キッチンの奥に洗面、お風呂と続きます。
水回りが一直線で続いているので、家事などの面でとても便利ではないでしょうか。

何度かお伝えした、キッチンの天井です。
「元々の火袋を復元することで、町家独特の天井の低さを解消した広々とした空間を作る」という今回のプラン。

吹き抜けにすることで開放感があり、また高窓から光も取り入れられるようになりました。和風のライトも雰囲気を高めています。

こちらはお風呂の窓を縁側から見たところ。
浴槽に浸かった時にお庭が見えるよう、窓の位置を微調整しています。
弊社では、こういった細かい配慮も欠かせないと考えています。

新しいお風呂も設置されました。こちらでゆったりとバスタイムを楽しまれることでしょう。

建物は完成したとお伝えしましたが、お庭の方は未完成でこれから造園作業に入ります。お庭が完成した際には、改めてこちらでお伝えする予定です。

最後になりましたが、暑い時期から寒い冬まで何度も打ち合わせに足をお運びくださった施主様。
大工に差し入れなど多くのお心遣いをいただき、厚く御礼申し上げます。

「希望していた以上に良い家に仕上がった」とお喜びの言葉までいただき、スタッフ一同とても嬉しく感じております。

心より深くお礼申し上げます。誠に有難う御座いました。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.6

暑い夏の盛りに解体が始まった
京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』

少し時間が空いてしまいましたが工事は順調に進み、いよいよ完成が近づいています。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5

広報担当者が初めて現場を訪れた際には、まだサッシ戸がついていた玄関。

サッシは取り外され、木製戸がつけられました。

1階と2階の窓には格子がつけられ、
壁の色と合わせた色調に変わり、町家らしい風情に。

これだけで印象がガラリと変化します。

土間には、落ち着いた色の左官仕上げ材である墨モルタルを流し込みました。

まだやわらかいうちに飾りタイルを埋め込んで、可愛らしい表情に。乾くとまた違った趣になります。

さて、これまでまだお伝えしていなかった改装ポイントが「ガレージ」です。
建物に向かって右の、もともと物置だった部分。

こちらをガレージにしたいという施主様のご希望です。

しかしもともとの間口が狭く、軽自動車でも入らないというスペース上の問題がありました。 弊社にてこのスペースに入る車種を調査したところ、超コンパクトカーなら入ると判明。
打ち合わせの時にご連絡し、ご納得いただいた上で施工に至りました。

見切り発車でガレージを作ってしまうと後々に大変なことになってしまいます。 しっかりと計画してからお客様にご提案し、お伝えすることが大切だと考えています。

物置のアルミ戸を撤去し、垂れ壁も取り除き、門構えのガレージが完成です。
ガレージ部の屋根には、和風の雰囲気をもたらす横葺きの金属屋根をつけました。

こちらのガレージは、明るく風通しも良く、出入りしやすい場所です。
施主様がお年を召されてゆくゆく介護などが必要になった際には、改修してお部屋にすることも可能です。

その時のことを考え、ガレージの横にトイレを再配置しています。

まだまだお元気な施主様ですが、弊社では住まわれる方のライフスタイルを見据えたプランのご提案を心がけています。

前回vol.5 ご紹介した、構造用合板で柱と柱、柱と梁をつなぎ「耐力壁」を入れた部分です。

耐力壁の上に断熱材を入れ、壁を仕上げました。
その後にシステムキッチンが入り、いよいよ完成の形に近づいています。

最初の回vol.1 でお伝えした工事前のキッチンの様子です。

築100年ほどになるこの住宅。
昭和の改装で天井が閉じられていましたが、
工事で天井を落としてみると、通り庭上部の火袋と高窓が現れました。

今回のリノベーションでご提案したのは、この高窓を生かして光を取り入れるプランです。

火袋の空間を生かしているので天井も高くなり、広々と感じられます。

施主様奥様は小さい頃、この家にお住まいでした。きっとその大切な思い出も、この火袋とともに続いていくことでしょう。

裏庭から見た高窓はこのような状態でした。

ペアガラスを入れ窓枠も塗装し直し、手間をかけて仕上げたことで、味わいが出たのではないでしょうか。

完成間近で、大工の仕上げも急ピッチで進んでいます。

完成編をお待ちください!

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.5

京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』、続報です。

前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2 vol.3 vol.4

今回は、工事現場から補強の様子を中心にお伝えします。

現場に、解体で取り除かれたボロボロの柱が置かれていました。 これは床下の木材のひとつ「大引(おおびき)」です。

このように家を支える土台となる部分です。

Vol.3でシロアリの被害についてお伝えしましたが、この大引きも深刻なシロアリの被害を受けていました。

築年数の古いお家は、時代の流れとともに周りの環境が変化し、建築当時の地盤より床下が低くなっていることがあります。そのため床下に水が流れ込んで湿気がちでシロアリにとって格好の環境となり、被害が大きくなったのでしょう。

今回のリノベーションでは、全体に防湿シートを敷き込んだ上でコンクリート土間を打ち、その上に基礎を作ります。シロアリが上がってくることはできなくなるので、新しいお家ではシロアリの被害はずいぶんと減ることでしょう。(vol.3参照)

こちらも、シロアリにより破損された柱です。

シロアリは水のあるところを起点にして1mほどしか移動できませんが、屋根から雨漏りがあると、どこまでも登ってくるので被害が甚大になります。

このように基礎を作って土台を入れ、シロアリで破損した木部は切り外し、土台と強固に繋ぐことで補強を行いました。

広報担当者、現場の大工に話を聞きました。 「こちらのお宅のシロアリの被害、ひどかったですか?」

「あちこちボロボロでしたわ。けど医者の手術のようにお腹を開いてみて『手の施しようがありませんでした』って閉じるわけにはいきません。シロアリの被害がひどかった部分をぜんぶ取り除くのに時間がかかって、なかなか大工道具を持たせてもらえませんわ」

冗談まじりにそう言う大工でしたが、やはり全体的にシロアリの被害があったようです。 弊社の熟練の大工の手によって傷んだ部分が取り除かれ、補強を行います。 「任しといてください」と頼もしい言葉が返ってきました。

さて、家が建ってしまってからは見えなくなる部分をご紹介します。

こちらは、構造用合板で柱と柱、柱と梁を繋いだ「耐力壁」です。

使用している「構造用合板」は、薄くスライスした板を重ねて一枚の合板にしているので、反りにくく強度が高いという特徴があります。壁の下地に使うことで地震に強い壁に仕上がります。

仕上げをすると見えなくなりますが、この処理をするとしないでは耐震効果に雲泥の差があるので、欠かせない部分です。

これらは特に補強が必要な場所に施工します。その判断は物件ごとに検討し、現場担当大工と弊社所長が行っています。

リノベーションにあたり、仮の柱を入れた写真です。

今回のリノベーションでは、庭に面した窓の部分をより広く見せるよう、柱を何本か抜きました。全体が仕上がるまで、崩れないように仮の柱(写真の斜めになった柱)をジャッキで取り付けています。

濡れ縁(壁や雨戸の外側につくられた縁側)の上部分にあたる、化粧軒天です。

シンプルな軒天のお家が多い中、和風建築では化粧垂木(だるき)を取り付けて美しく仕上げることも多々あります。

今回のリノベーションでも、奥行き135cmの長めの軒を作り、その軒天(軒裏)は創意工夫をこらし美しく仕上げました。大工の熟練の技が生きた部分ではないでしょうか。

まだまだこれから、問題ある部分を補強していきます。 続報をお待ちください!

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.4

京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』。続報をお届けします。

前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2 vol.3

弊社スタッフ、施主様ご夫妻とともに京都御池にあるタカラスタンダードショールームを訪れました。

ここは、キッチンや浴室などに設置する製品が展示されているショールーム。専属アドバイザーによる説明もあり、製品を見たり触れたりすることで、使用感を確かめることができます。

弊社はサイズ感やデザイン面の視点から、施主様の製品選びをお手伝いをします。

施主様は、シックな木調デザインのシステムキッチン、浴室暖房や乾燥機など機能が充実したホーローのタカラスタンドード製の浴室を選ばれました。

新しく生まれ変わる家に、これらの製品が実際に設置された様子が早く見てみたい!とワクワクした広報担当者です。

ショールームを後にした一行。

施主様とともに現場へと向かい、工事の様子を見て回りました。

最初の回(vol.1)で前回お伝えしたキッチンの上部です。

閉じられていた天井を開けると… 往時を偲ばせる、通り庭上部の火袋と高窓が現れました!

こちらは、改修前のキッチン。吹き抜け部分が閉じられていたので、ずいぶん印象が異なります。

子どもの頃この家にお住まいだった、施主である奥様。

「あの高窓、あるのは覚えてました。途中で天井を閉じたんです。古い家だから、家の中は何回も直してたんですよ」

施主様宅のように、昔ながらの町家はその後の改修で天井を閉じてしまうことが多々あります。

今回のリノベーションでは、隠されていたこの火袋を復元し、窓ガラスはペアガラスに交換することで光も取り入れます。

元々の火袋を復元することで、町家独特の天井の低さを解消した広々とした空間が出来上がることでしょう。

解体したことで、壁や柱などこれまで見えていなかったところがあらわになっています。

「すごいな、こんなんでよう建ってたな、ボロボロやわ」とご主人。

ここに補修を加えながら、耐久性もデザイン性も優れた家へと生まれ変わらせるのが吟優舎の仕事。気合いが入ります。

「子どもの頃の思い出が詰まってるから…懐かしいわ」と家中を見つめる奥様。

「きれいになるのが楽しみですね」とお声をかけると「本当にね」と頷かれました。

一体どんな家に生まれ変わるのでしょうか。広報担当者もとても楽しみです。

blogged by 黒川京子

京都市東山区 『山手の街並みに佇む町家リノベーション』 vol.3

京都東山区の『山手の街並みに佇む町家リノベーション』。引き続き解体現場からお届けします。

前回までのお話はこちら→vol.1 vol.2

今回のリノベーションにおいて、ある問題が見つかりました。
シロアリの被害が深刻です。

写真は、改修前の家を外から見たところです。

家の横が法面になっていて、周りよりも家の方が地盤が低くなっています。この地形のせいで雨水が家の床下に流れ込み、シロアリにとって格好の湿気がちな環境になったと思われます。

ご覧のように、柱の被害も甚大です。

広報担当者、他にもシロアリの被害を見ようと家の中を見て回っていると…

「足元に気をつけてくださいね!床がだいぶシロアリにやられてしまっているので」。 瓦礫を運ぶ職人から声がかかりました。

足元が危ないので板でカバーしているとのこと。

「僕らも、何回も足がハマったんですわ。めくりましょうか?」

お願いします、と開けてもらうと…

床下の木がボロボロになっていました。

シロアリの性質として、水のあるところを起点にして1mほどしか移動できません。 ここまで被害があるということは、湿気の影響をかなり受けていたと考えられます。

特にひどい被害が見られたのが、庭に面した柱です。

約90年前の建物なので、家の基礎らしいものがありません。柱が地面に接している分、被害がひどくなったのでしょう。

そこで施主様とお話をし、当初の計画にはありませんでしたが、床下全体に防湿シートを敷き込んだ上で、コンクリート土間を全面に打つことになりました。

これでシロアリが上がってくることはできなくなるので、床下に水が流れ込むことがあっても被害を最小限に食い止めることができます。

こちらが土間が打たれた床下です。

ボロボロになっていた柱はこのように新しくなりました。 基礎を作り土台を入れ、シロアリで破損した木部は切り外し、土台と強固に繋ぎました。

「シロアリ対策はとても重要です。ひどい時には通し柱が丸ごと被害を受けることがあります。家の耐久性にも関わってくるので、水捌けは非常に大事だなと感じる部分です」と弊社所長。

年月を経たお家をリノベーションすることが多い吟優舎。

シロアリ対策においても、将来を見据えたご提案と、しっかりした施工を追求しています。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子