『 最近の記事 』

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.5

2002年(平成14年)に「歴史的意匠建造物」、2024年(令和6年)には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、築100年を超える京町家リノベーション。
いよいよ、完成編(前編)をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4

「観光・食事・鑑賞」が楽しめるプライベート空間 『あそんでいきなはれKYOTO』として新しく生まれ変わり、玄関横の壁には切文字看板もつけられました。

「おうちへ遊びにおいでよ」というコンセプトを京言葉で表現した店名。
そして施主様自らデザインされたロゴマーク(チューリップとAの文字をイメージ)が、切文字で表現されています。

チューリップの花言葉は「思いやり」、Aはアットホームを表し、アットホームなおもてなしができたらという施主様の思いが込められています。この切文字看板設置も、吟優舎でお手伝いさせていただきました。

BEFORE
AFTER

玄関扉を開ければ土間、その隣の部屋はダイニングキッチンへと再構成。
工事前は畳の四畳半だったため、ずいぶんと印象が変化しました。

建物の外観は趣のある京町家ですが、一旦扉を開けるとおもてなしにふさわしい華やかさが広がります。古さと新しさがマッチしているのではないでしょうか。

vol.4でお伝えした、アイランドキッチンです。
ふだんはご家族のキッチンとして使われていますが、おもてなしの際にはここがお客様との会話の中心に。時には、出張シェフが腕を振るうこともあります。

タイル貼り込み前
タイル貼り込み後

モダンなタイルが目を引くこちらの壁。
棚の板を先に組み込んでいるので、職人がタイルをカットし、繋がっているかのように丁寧に貼り込みました。職人ならではの技が生きています。

BEFORE
AFTER
AFTER

こちらが、ダイニングキッチンの全体です。
瀟酒なダイニングから奥へと視線が広がり、奥庭の緑がアイストップに。

立派なシャンデリアが輝く内装は、施主様のこだわりが結集した部分。全てを新しくするのではなく、残すべき良いものは残し、新しいものとなじむよう磨き上げてから再設置しています。

AFTER

ダイニングキッチンと座敷を分けるのは、 3枚引き戸の京唐紙の襖。その横には、晒竹(さらしたけ)のパーテーションを設置しました。

晒竹(さらしたけ)のパーテーションは、完全に目線を塞ぐのではなく、適度に目線を遮りながらも向こう側が見えるため、奥行きを感じさせることができるポイントとなっています。

ランダムに並ぶ節が美しく、オブジェのような存在感も併せ持ちます。 現代的なインテリアと違和感なく調和しているのではないでしょうか。

今回はここまでのご紹介とさせていただきます。
完成編(後編)をお待ちくださいませ。

blogged by 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』 vol.4

日々変化する京都の街並みの中で、まだ昔ながらの京の面影を残す下京区六条。100年以上の歴史がある町家を、古き良きものを残しながらリノベーション。新たに生まれ変わった部分をご紹介していきます。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3

「この町家を建てた当時の持ち主は、骨董商をしていたようです」

施主様のお言葉に「なるほど」と思わず頷いてしまうほど、素材や様式にこだわった美しい意匠が家中に見られる数寄屋造りの町家。

中でも、2階和室天井に取りつけられていた大きく美しい灯りは、目を奪う迫力がありました。

解体中に撮影した灯りです。



大きな球体のシェードに嵌められた真鍮の装飾が、レトロな印象を醸し出しています。真下で見ると圧巻であり、時代を経ても変わらない美しさを感じさせます。

解体中は2階の床が外されていたため1階からもよく見えましたが、やはり存在感があります。

ここまで立派なものは、現在では探してもなかなか見つからないもの。リノベーション後もこの灯りをぜひ生かしたいと考え、今回新たに作る1階ガレージの灯りとして再設定するプランをご提案しました。

こちらが、新しく作ったガレージに設置された様子です。

町家のファサードとよくマッチしているのではないでしょうか。外からも見えるため、まるでこの町家の新しいシンボルになったようです。

もう一度、工事中の2階へと戻ります。

立派で趣向を凝らした造りは、灯りだけではありません。

丸太と煤竹(すすたけ)を組み合わせた、独特の趣を放つ天井です。煤竹とは、元々は古民家の囲炉裏の煙で燻されて変色した竹のこと。茶褐色の色合いが魅力です。

勾配のある船底天井は、空間を広く見せるだけでなく落ち着いた雰囲気をもたらすのが特徴です。



状態もよく大変美しいため、埃払いと部分補修を加えてそのまま生かすことになりました。

新しくなった2階です。



床は断熱材を入れた上でアカシア材のフローリングに。壁のやわらかな桃茶色のクロスが、煤竹の船底天井とフローリングを優しく繋ぎます。

時を経たものには、新しいものにはない美しさがあります。古き良きものを残しながらセンスと技術で磨き込み、新しいものとの絶妙な調和を追求しながら個性に昇華させる。吟優舎の設計プランが目指しているところです。

blogged by 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.3

100年以上の歴史を持つ、数寄屋造りの町家。古き良き意匠が数多く残る、立派な一軒です。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2

吟優舎では、よりご満足いただけるリノベーションを実現するため、施主様のライフスタイルや趣味などを加味した設計プランニングを行っています。

こちらの施主様が気にされていたのは、就寝時のいびき。

そこで、隣り合う2つの寝室を隔てる壁に、防音施工を行うご提案をしました。

寝室工事の状況です。

壁の黒っぽいシート状のものは遮音シートです。燃えにくいポリエチレン系発泡シートでできており、壁の中に設置することで音の伝わりを抑制する効果があります。話し声やテレビの音などが隣室に伝わりにくくなります。

また、防音扉を設置するための枠取り付け施工も行いました。

これらの施工は、あらかじめエアコンや家具の位置を決定してから慎重に行っています。後から壁や天井に穴を開けると、防音効果が低減するためです。

同じように、トイレ壁にも遮音シートを施工しています。

寝室全体の工事も進んでいます。

施主様が購入予定のベッド横には、高さがぴったりと合うサイドテーブルを造作しました。

既製品も検討しましたが、造作だとより最適な高さに設定でき、ベッドから調光などの操作がしやすくなります。

このように吟優舎では、全ての家具や家電を施主様に決定(場合によっては購入)して頂き、サイズや形状を確認。配置は弊社で検討し、図面に反映させていきます。

あらかじめ家具と配置を決めることで、ちょうどいい場所にスイッチやコンセントなどを設置でき、住み始めてからの満足度が高いリノベーションが可能になります。

吟優舎のこだわりの一つです。

blogged by 黒川京子

お客様の声<京都市伏見区H様>

お客様が、ご依頼の経緯や施工の感想をお書きくださいましたので、ご紹介いたします。

【京都市伏見区H様より】

まだ具体的なリフォームの計画もなかった頃、偶然に吟優舎さんのホームページに出会い、施工例の写真を見てひと目で住みたい!!と思いました。

わが家は築100年近い京町家の長屋の連棟で、夫の両親と私たち家族が隣同士の1軒ずつに住んでおりました。子どもたちが独立し両親と愛猫を見送ったあと、老朽化した家をどうするか考えていたところ、息子家族が隣同士で住みたいと言ってくれたので、一気に話が進み、私たち夫婦は両親が住んでいた方をリフォームすることになりました。

そこで真っ先に頭に浮かんだのは吟優舎さんの施工例の写真の数々です。大正浪漫の雰囲気漂う和モダンな家に住みたいと思う気持ちが膨れ上がり、ドキドキしながらホームページに載っている番号に電話をかけました。

松山社長に見積りの依頼を受けていただき、待ちに待ったその日がやって来ました。緊張しながらご挨拶をさせていただいた後、さっそく家の中を見ていただきました。社長様が瞬時に提案してくださる内容が、まるでこちらの希望を予め知っておられたかのようで驚きました。

後日、施工費用など簡潔明瞭に説明していただき正式に契約させていただきました。それからの打ち合わせは社長様の素晴らしいセンスとスタッフの皆様の温かいお気遣いで、毎回楽しい時間を過ごさせていただきました。

随所に思いやりと工夫を感じる設計とひと味もふた味も違う建具や照明で、期待は益々高まりました。工事が始まってからは、元の家の一部も残しながら美しく生まれ変わっていく過程を見ることができ感動しました。工事関係者の皆様には、夢を形にしていただき感謝の気持ちでいっぱいです。

さて、新居に暮らし始めて2ヶ月近くになりました。夏休みほぼ毎日うちで預かっていた小学生の孫たちは、輝くような緑の庭とその庭が見えるお風呂が大好きです。格子窓から見える電車もお気に入りです。

アンティークな照明に唐紙の襖、キッチンや土間のタイル、玄関の蔵戸(注目の的です)。使い勝手が良いのは勿論、大好きなものに囲まれた暮らしがこれほど心を満たしてくれるとは!!日々実感しております。

吟優舎の社長様、スタッフの皆様、工事関係者の皆様。1年以上に渡りお世話になりました。心よりお礼を申し上げますとともに、益々のご発展をお祈りいたしております。

H様からのお声をご紹介しました。

大切なお家のリノベーションを任せてくださり、さらにはこのようなメッセージをくださいますこと、大変嬉しく、また大きな励みになります。

ご近所の皆様のお声やお孫様の可愛らしい様子もお聞かせくださり、心が温まる思いです。深くお礼を申し上げます。

お客様に感動していただくことを目標に、今後も社員全員で日々の仕事を大切にしてまいります。 誠にありがとうございます。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

伏見御香宮 古民家リノベーション『蔵』vol.9

名水で知られる京都伏見の「御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)」から徒歩数分。築100年ほどになる連棟の古民家リノベーション。いよいよ完結編をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4 vol.5 vol.6 vol.7 vol.8

昔ながらの町家に、必ず造られてきたものといえば「庭」。

解体後の座敷と庭

一日中室内が薄暗い京町家にとって、窓は美しい景色を愛でるだけでなく、通風と彩光のためになくてはならないものでした。
庭があることで家の中に新鮮な空気と光を取り込むことができるのです。

吟優舎のリノベーションにおいても、庭は大切な空間。庭を囲むように居間、浴室、洗面室、お手洗いを配置し、風と光を最大限に取り込むプランを基本としています。

こちらのリノベーションでも、施主様がご両親から受け継がれた庭を中心にしたプランをご提案しました。

リノベーション前の廊下とお風呂です。



ゾーニングはそのままに、美しく整え、新しい意匠も盛り込みました。

廊下の入口は、茶室の入口=火灯口(かとうぐち)をイメージしたアーチ開口に。

お風呂への期待感が高まるようなアプローチを意識しています。

アーチ開口手前のスペースには、アンティークショップでご購入された本棚がすっぽり収まっています。この上にはライトを置きたいということで、コンセント差込口も設置しました。

ブログvol.5でお伝えしたように、施主様には工事前に家具のサイズをあらかじめお知らせいただきます。それに合わせてコンセントの位置や壁の位置を決定しますので、失敗がありません。

廊下の幅はリノベーション前よりも広く取り、格子状の意匠を凝らした天井にはダウンライトを仕込みました。

少し狭さを感じさせていた脱衣所も、すっきりと広くなりました。

システムバスは、施主様がショールームにて選ばれた、タカラスタンダードの「GRANSPA」。掃除しやすい床材が魅力です。

参考:ブログvol.2

そして一番のポイントは、湯船から臨む景色です。

「庭を眺めながら浸かるのが楽しみです」と仰っていた施主様。 新しいお風呂を使われた後には「気持ち良かったです、まるで別世界でした」と喜んでおられました。

お風呂のリノベーションでは、窓からの風景を楽しみにされる施主様も多くいらっしゃいます。

吟優舎では、庭への眺めをよくするために、浴室の窓を出来るだけ浴槽に寄せて低く設置するようにプランニングしています。

庭を囲む塀は、焼き板にし落ち着きのある印象に。

いくぶん鬱蒼としていた庭は、庭師の手により風情が感じられる風景へと生まれ変わりました。

四季によって移ろう自然の景色は、飽きることがありません。
日々の暮らしに潤いをもたらすことでしょう。

最後に、隣家にお住まいの中で行われた工事。施主様には大変なご苦労であったことと思います。終始にこやかにご対応くださり、心より深く御礼申し上げます。

誠に有り難うございました。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子