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下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』 vol.5

Before:リノベーション前の外観

六条通りにほど近い、100年以上の歴史を持つ京町家。 前回は、エントランスに移設したアンティークの灯りや、船底天井を生かした2階部分をご紹介しました。

前回までのお話はこちら→ vol.1vol.2 vol.3 vol.4

今回も、完成した部分をご紹介していきます。
歴史と施主様のこだわりが息づく空間、どうぞご覧ください。

この町家の特徴のひとつが、玄関庭と屋内茶室があったこと。
今回のリノベーションでは、この部分をガレージへと再構成しました。


After:新しく生まれ変わった玄関とガレージ

ガレージの奥に玄関と勝手口を配置。もともと茶室だった空間が、施主様の暮らしに寄り添うガレージへと変わりました。

玄関の壁に見える黒い柱は、もともとの大黒柱。この家の歴史を象徴する大切な存在だからこそ、あえて隠さずにデザインに生かしました。

3つの天井が織りなす玄関

玄関の天井には、異なる3つのデザインが共存しています。

網代天井:薄く削いだ竹を編み込んだ様式。上品な趣を演出。
竿縁天井:伝統的な和風建築に多い、細い角材を使った様式。
元々の天井:家の歴史や風合いを残す工夫。


異なる表情が響き合い、訪れる人を迎え入れます。

猫足スタンプと金魚手洗い

勝手口の土間には、猫好きの施主様がご用意された猫足スタンプが。職人がバランスを考え、ひとつ一つ押しました。

その先には、金魚柄タイルがかわいい手洗いを。ブロックと市販のガーデンパンを組み合わせ、タイルを貼って一体感が出るように工夫しています。
施主様のこだわりが詰まった、とても可愛らしい一角になりました。

インスタグラムでこの部分の動画を見る

ウッドデッキへと変化した通り庭

玄関から奥へと続く土間「通り庭」は、ウッドデッキにリノベーション。既存の透明素材の屋根を活かし、可動収納式の物干しを設置。
天気に関わらず洗濯物を干すことができるようになり、機能性がぐんと向上しました。

まだまだ見どころ満載

歴史とこだわりが詰まった大正ロマン数寄屋造りの町家。次回はまた別の空間をお届けします。お楽しみに。



❖吟優舎の施工写真や動画はInstagramで→ @ginyusya_official

❖ご相談はこちらよりどうぞ


blogged by 黒川京子

京都市上京区西陣 京町家リノベーション『雅』vol.5

2002年(平成14年)に「歴史的意匠建造物」、2024年(令和6年)には「歴史的風致形成建造物」の指定を受けた、築100年を超える京町家リノベーション。
いよいよ、完成編(前編)をお届けします。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3 vol.4

「観光・食事・鑑賞」が楽しめるプライベート空間 『あそんでいきなはれKYOTO』として新しく生まれ変わり、玄関横の壁には切文字看板もつけられました。

「おうちへ遊びにおいでよ」というコンセプトを京言葉で表現した店名。
そして施主様自らデザインされたロゴマーク(チューリップとAの文字をイメージ)が、切文字で表現されています。

チューリップの花言葉は「思いやり」、Aはアットホームを表し、アットホームなおもてなしができたらという施主様の思いが込められています。この切文字看板設置も、吟優舎でお手伝いさせていただきました。

BEFORE
AFTER

玄関扉を開ければ土間、その隣の部屋はダイニングキッチンへと再構成。
工事前は畳の四畳半だったため、ずいぶんと印象が変化しました。

建物の外観は趣のある京町家ですが、一旦扉を開けるとおもてなしにふさわしい華やかさが広がります。古さと新しさがマッチしているのではないでしょうか。

vol.4でお伝えした、アイランドキッチンです。
ふだんはご家族のキッチンとして使われていますが、おもてなしの際にはここがお客様との会話の中心に。時には、出張シェフが腕を振るうこともあります。

タイル貼り込み前
タイル貼り込み後

モダンなタイルが目を引くこちらの壁。
棚の板を先に組み込んでいるので、職人がタイルをカットし、繋がっているかのように丁寧に貼り込みました。職人ならではの技が生きています。

BEFORE
AFTER
AFTER

こちらが、ダイニングキッチンの全体です。
瀟酒なダイニングから奥へと視線が広がり、奥庭の緑がアイストップに。

立派なシャンデリアが輝く内装は、施主様のこだわりが結集した部分。全てを新しくするのではなく、残すべき良いものは残し、新しいものとなじむよう磨き上げてから再設置しています。

AFTER

ダイニングキッチンと座敷を分けるのは、 3枚引き戸の京唐紙の襖。その横には、晒竹(さらしたけ)のパーテーションを設置しました。

晒竹(さらしたけ)のパーテーションは、完全に目線を塞ぐのではなく、適度に目線を遮りながらも向こう側が見えるため、奥行きを感じさせることができるポイントとなっています。

ランダムに並ぶ節が美しく、オブジェのような存在感も併せ持ちます。 現代的なインテリアと違和感なく調和しているのではないでしょうか。

今回はここまでのご紹介とさせていただきます。
完成編(後編)をお待ちくださいませ。

blogged by 黒川京子

季節のお便り

施主様から、素敵なお庭の写真と嬉しいメッセージを頂きました。

色づいた紅葉とともに、丁寧な暮らしを楽しんでいらっしゃることが伝わってきます。

吟優舎では、ご契約が済むと施主様とのグループLINEを作ります。LINEグループは竣工後も残し、どんな些細なことでもお客様がご相談できる体制を心がけています。ご相談だけでなく、このように季節のメッセージを送ってくださることもあり、私たちも大変楽しみに拝見しています。

後に、追加のお写真とメッセージもいただきました。

「この美しい紅葉をこれから毎年見ることが出来るのかと思うととても贅沢です
ツワブキの花の写真も撮ってみました
可愛らしい様子に優しい気持ちになりました
葉も生き生きしており これからの成長が楽しみです」

大切に住まわれている様子は、私たちの大きな励みになります。誠に有り難うございます。

blogged by 松山一磨 & 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』 vol.4

日々変化する京都の街並みの中で、まだ昔ながらの京の面影を残す下京区六条。100年以上の歴史がある町家を、古き良きものを残しながらリノベーション。新たに生まれ変わった部分をご紹介していきます。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2 vol.3

「この町家を建てた当時の持ち主は、骨董商をしていたようです」

施主様のお言葉に「なるほど」と思わず頷いてしまうほど、素材や様式にこだわった美しい意匠が家中に見られる数寄屋造りの町家。

中でも、2階和室天井に取りつけられていた大きく美しい灯りは、目を奪う迫力がありました。

解体中に撮影した灯りです。



大きな球体のシェードに嵌められた真鍮の装飾が、レトロな印象を醸し出しています。真下で見ると圧巻であり、時代を経ても変わらない美しさを感じさせます。

解体中は2階の床が外されていたため1階からもよく見えましたが、やはり存在感があります。

ここまで立派なものは、現在では探してもなかなか見つからないもの。リノベーション後もこの灯りをぜひ生かしたいと考え、今回新たに作る1階ガレージの灯りとして再設定するプランをご提案しました。

こちらが、新しく作ったガレージに設置された様子です。

町家のファサードとよくマッチしているのではないでしょうか。外からも見えるため、まるでこの町家の新しいシンボルになったようです。

もう一度、工事中の2階へと戻ります。

立派で趣向を凝らした造りは、灯りだけではありません。

丸太と煤竹(すすたけ)を組み合わせた、独特の趣を放つ天井です。煤竹とは、元々は古民家の囲炉裏の煙で燻されて変色した竹のこと。茶褐色の色合いが魅力です。

勾配のある船底天井は、空間を広く見せるだけでなく落ち着いた雰囲気をもたらすのが特徴です。



状態もよく大変美しいため、埃払いと部分補修を加えてそのまま生かすことになりました。

新しくなった2階です。



床は断熱材を入れた上でアカシア材のフローリングに。壁のやわらかな桃茶色のクロスが、煤竹の船底天井とフローリングを優しく繋ぎます。

時を経たものには、新しいものにはない美しさがあります。古き良きものを残しながらセンスと技術で磨き込み、新しいものとの絶妙な調和を追求しながら個性に昇華させる。吟優舎の設計プランが目指しているところです。

blogged by 黒川京子

下京区六条『大正ロマン数寄屋造りの町家リノベーション』vol.3

100年以上の歴史を持つ、数寄屋造りの町家。古き良き意匠が数多く残る、立派な一軒です。

前回までのお話はこちら→ vol.1 vol.2

吟優舎では、よりご満足いただけるリノベーションを実現するため、施主様のライフスタイルや趣味などを加味した設計プランニングを行っています。

こちらの施主様が気にされていたのは、就寝時のいびき。

そこで、隣り合う2つの寝室を隔てる壁に、防音施工を行うご提案をしました。

寝室工事の状況です。

壁の黒っぽいシート状のものは遮音シートです。燃えにくいポリエチレン系発泡シートでできており、壁の中に設置することで音の伝わりを抑制する効果があります。話し声やテレビの音などが隣室に伝わりにくくなります。

また、防音扉を設置するための枠取り付け施工も行いました。

これらの施工は、あらかじめエアコンや家具の位置を決定してから慎重に行っています。後から壁や天井に穴を開けると、防音効果が低減するためです。

同じように、トイレ壁にも遮音シートを施工しています。

寝室全体の工事も進んでいます。

施主様が購入予定のベッド横には、高さがぴったりと合うサイドテーブルを造作しました。

既製品も検討しましたが、造作だとより最適な高さに設定でき、ベッドから調光などの操作がしやすくなります。

このように吟優舎では、全ての家具や家電を施主様に決定(場合によっては購入)して頂き、サイズや形状を確認。配置は弊社で検討し、図面に反映させていきます。

あらかじめ家具と配置を決めることで、ちょうどいい場所にスイッチやコンセントなどを設置でき、住み始めてからの満足度が高いリノベーションが可能になります。

吟優舎のこだわりの一つです。

blogged by 黒川京子